残滓

かつての友人のことを、ふと思い出した。
当時は親友と言っても大袈裟ではない関係だったと、私は思っている。もちろん、向こうがどう思っていたのかはわからないけれど。
とにかく、私はあの人が好きだったし、あの人もそれなりに私を好きでいてくれたのだと思う。だから、何だかんだ付き合ってくれていたのだと。
でも、今となっては、それも過去の話。
もう何年も連絡を取っていないし、そもそも連絡先を知らないし、何をしているかも知らない。知る方法がないではないけれど、知っても仕方がないと思う。
本当に些細なことではあるけれど、一度嫌いになってしまったものはもう、駄目なんだ。
それに、私が望むなら云々と御大層な言葉を並べ立てながら、追い縋るでもない。
所詮はその程度の、浅慮で無責任で言葉だけはご立派な有象無象の一人でしかない。
だから、あれは嫌いなの。
もう忘れてしまおう。
自分が思うほど、相手は自分を思ってはくれないものね。
自分のほうがより深く相手を思っていると考えるのは、傲慢かもしれないけれど。